株式会社LIFULLは日本最大級の不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME'S(ライフルホームズ)」の運営を中心に、住まいに関する様々なサービスを展開しています。その中でも、2022年に公開されたVRを活用した『空飛ぶホームズくん』や、感情と風景を重ねて表示するARプラットフォーム『Finding Serendipity』、価値観で住みたい街を見つけられる『VALUES MAP』の三つのサービスを軸にお話しを伺いました。
サービス紹介
『空飛ぶホームズくん』
VR(バーチャルリアリティ)による新しい住まい探し体験を提供するAndroidアプリです。VR上で3Dの街の上を飛びながら、LIFULL HOME'Sに掲載している物件を眺め、気になる物件を選択すると3Dで内見することができます。一般的に、街の情報を見るサービスと、VR内見サービスは分かれていることが多いですが、『空飛ぶホームズくん』では、ひとつのサービスの中で一貫して体験できるようになっています。
『VALUES MAP』
自分と同じ価値観の人がWell-beingに暮らす街を探せるWebマップです。人が持つ価値観をシュワルツの価値観理論に基づき、「スイスイ決断志向」「ガッチリ安全志向」などの10種類のVALUESとして分類、キャラクター化しています。Web上で簡単な設問から自分の価値観を診断し、その価値観の人が多い街を提案してくれます。
『Finding Serendipity』
ユーザーが街を歩いていた時に気づいたことや感情を蓄積し、風景と重ねて表示することで、ひとりでは見つけることができなかった素敵な“偶然”を発見できるARプラットフォームです。iPhoneアプリ上でその場所で撮影した綺麗な写真やその時の「わくわく」「しくしく」などの感情を記録して他のユーザーと共有することができます。例えば、ユーザーは右に曲がったところにわくわくが集まっていて、その理由を写真等で確認することができるのです。
導入の経緯
2022年9月に公開された『空飛ぶホームズくん』では、当初別の地図サービスを利用していましたが、利用していた地図サービスが終了することになってしまったため、地図サービスのリプレイスを比較検討することになりました。
「比較検討の際は、スマートフォンでの利用におけるパフォーマンス(動作の軽さ)や、Unityで開発していたため、Unityで扱いやすいかという点が大きな軸でした。全国でサービスを展開したかったため、日本全国をカバーし、地方都市や人口が少ない場所でも建物データ等が揃っていることが重要でした。これらの条件を踏まえつつ、一番パフォーマンスがよく、導入前のサポートがよかったのがMapboxでした。現在はMapboxへの移行が完了し、左上に表示するマップ部分と3DモデルデータでMapbox Maps SDK for Unityを利用しています。
また、『Finding Serendipity』は『空飛ぶホームズくん』がある程度形になった後に開発されたものです。たまたまNiantic社とのご縁もあり、AR体験を実現するアプリ開発キット「Niantic Lightship ARDK」を使って開発しました。アプリの中で表示する物件のデータは『空飛ぶホームズくん』と同じため、使えるリソースをフル活用するためにも、同じくMapbox Maps SDK for Unityを利用しています。」
導入の効果
『空飛ぶホームズくん』の他社サービスからの移行は特に大きな問題もなく、スムーズに三ヶ月で完了しました。
「特に時間をかけたところは建物デザインの調整です。もともと3D建物に屋根・窓などの独自のテクスチャを設定してデザインしていたため、Mapboxでも仕組みは若干異なっていたものの、同様の見た目を保持することができました」上野哲史氏(クリエイティブ本部未来デザイン推進室リサーチ&デザイングループ)
「さらに、Mapboxでは建物のカスタマイズを簡単にすることができました。地図は情報過多になりやすいため、自分たちが表示したい物件などの情報を目立たせるためにも、不要な情報を非表示するなどのハンドリングが重要になると考えています。Mapboxはそこを柔軟に行うことができました。ある建物を消して、別な建物を置くなどのリプレイスも簡単にできたのも嬉しいポイントです」
価値観で住みたい街を見つけられる『VALUES MAP』でも、API化されている点と他プロジェクトとの連携という点からMapboxのMap Loads for Webを利用しています。
「比較検討した際にMapboxはスタイリングのしやすさが魅力的でした。『VALUES MAP』のトーンに合わせて地図のデザインをカスタマイズして利用しています。Mapboxは元々のデザインが綺麗なものも多かったので、そのままテンプレートの色合いで使っている部分もあります。他社では難しかった、マーカーのデザインを柔軟に変更できる機能も重宝しています。価値観10パターン×600件以上のデータを地図上に表示していますが、数値を参照してバリエーションを作れるので視覚的にわかりやすくてよいです」
将来の展望
「『Finding Serendipity』は今の時代よりもう少し先、スマートグラス(ARグラス)が普通になる世界を前提に企画を始めました。今後そのような時代が来た時に、歩いている街が気に入って住みたいと感じたタイミングで、ユーザーに自然な形で、物件を表示するなどのアプローチをできるようにしていきたいですね。不動産情報サービスは一度引っ越すとその先数年間はアクセスされないことが多いですが、さまざまなサービスでユーザーとの接触を持ち続けることで、引っ越したい・暮らしてみたいタイミングを作り出していきたいです
「『空飛ぶホームズくん』『Finding Serendipity』『VALUES MAP』のサービスは、最終的には同じサービスに統合していきたいと考えています。Mapboxのサービスには将来性を感じていますし、ランドマークの3D表示や3D地形データなど、組み込みたいものがたくさんあります。Mapboxの今後のプロダクトにも期待しています」