コロナ禍を経て、人々の移動や周遊傾向に世の中の注目度が高まる中、「位置情報ビッグデータ」は人流を捉える「人流データ」として様々な場面で活用されてきました。コロナ禍には密を避けるため、コロナ後には訪日外国人観光客の増加による観光動態把握のためなど、観光領域を中心にまちづくりや交通領域においても人流データの利活用が進んでいます。
そんな人流データの活用においては、有用なデータソースを用いることはもちろん、いかにデータを組み合わせ、可視化するかといったことも重要です。
株式会社ナイトレイ様(以下、ナイトレイ)は、人流データを用いた地域活性化支援ソリューション「CITY INSIGHT(シティ インサイト)」を提供する会社です。CITY INSIGHTにはレポーティングや解析データ提供を行うコンサルティングサービスと、Web上で人々の移動/周遊傾向を分析できるソフトウェアソリューションがあり、訪日外国人・日本人どちらの調査/分析も可能です。
ナイトレイでは創業時から積極的にパートナー企業とタッグを組み、多様な人流データの活用を得意としています。これまでに通信業界や自動車業界の企業とパートナーシップを結び、現在は携帯キャリアデータ、アプリGPSデータ、キャッシュレス決済データなど、人の流れや消費者行動に関するデータも活用しています。
そんなナイトレイが自社開発したWeb分析ツールでは、Mapbox GL JSとMapbox Studioを導入していただいております。本記事ではMapboxの導入にあたっての経緯と具体的な活用方法についてご紹介していきます。
人流データの活用ハードルを引き下げたWeb分析ツール
CITY INSIGHTの前身でもあり訪日外国人に特化した分析サービスinbound insight*やCITY INSIGHTの分析ダッシュボードでは、自社の独自技術で収集・解析した位置情報解析済みSNSデータ(SNS解析データ)を主要データとして扱っており、SNSに位置情報付きで投稿されたクチコミを解析し、投稿地点や投稿施設カテゴリー・投稿者の周遊傾向を地図上に表示できます。人流データ活用に不慣れなユーザーでも直感的に操作でき、一目で人流がわかるようなマップ表示にもこだわり、メッシュマップで色の濃淡をつけることで人口を表現する工夫がされていました。
※inbound insightは2022年にCITY INSIGHTにサービス統合しました。
タイムリー性が重要なSNS解析データ
一般的な人流データと異なり、SNS解析データはタイムリー性が特徴です。ナイトレイでは、データをさらに効果的に活用するために、データを自社データベースに保持し、常時自由に解析を行いながら必要なデータの抽出・可視化できる状態を作る必要がありました。
しかし、もともとデータの可視化・分析に使用していた地図サービスでは、サービス側のデータベースにデータをアップロードしないと可視化や分析ができないという仕様だったため、代替サービスを探していました。
また代替サービスを探す上では、複数のデータを自由に重ねて地図上に表示できること、そしてマップデザインのカスタマイズ性が高いこと、といった前提条件もありました。
これらの条件を満たす地図開発サービスを探していく中で、自社データベースからもデータを読み込むことができ、かつデータレイヤーやマップデザインのカスタマイズ性が高いMapbox GL JSの導入を決めていただきました。
より効果的なデータ活用のための マップのカスタマイズ
こうして実装されたデータ可視化マップでは、Mapboxのデータレイヤーやマップデザインにおける高いカスタマイズ性を活かした、多くの工夫がなされています。
例えばデータレイヤーの面では、SNS解析データや他の人流データなどを組み合わせることはもちろん、Turf.jsやLeafletなどのJS系のライブラリを解析用途に応じて組み合わせています。データを重ねて表示することに加え、JS系ライブラリも組み合わせることで、インタラクティブな分析ツールとしてデータ分析をより効果的に行うことができます。
▲ SNS解析データと人々の移動データを組み合わせたマップ(inbound insight)
またマップデザインの部分では、マップ上に表示するデータをわかりやすく表示するため、その他の情報の色味、ラベルなどは極力シンプルにしつつも、表示エリアの情報がわかるように最低限の要素をバランスよく表示するといった工夫が組み込まれています。以下の地図では、駅や地域、道路に関するラベルが、表示するデータを邪魔しないようにしつつもわかりやすく表現されています。
また、マップのズームレベルに応じて、駅や道路、主要施設などの表示を切り替えることで、見える情報量を調整し、データ分析をする際のUXへの考慮もなされています。ズームレベルを拡大するにつれ、より詳細な情報が表示されるなど、ズームレベルに最適な情報量に調整し、データ分析に集中できる可視化マップになっています。
▲ ズームレベルによって表示する情報量をコントロールし、データを分析する際のUXが考慮されている。(inbound insight)
マップデザインのトライ&エラー
またマップデザインの微調整には、Mapbox Studioを活用していただいております。Mapbox GL JSの導入当初はなかったMapbox Studioですが、リリース直後から導入していただきました。Mapbox Studioを活用することにより、デザイン調整がより柔軟にかつ手軽にできるようになり、マップスタイルの試行錯誤がしやすくなったそうです。
課題を解決できただけでなく、最先端のマップサービスとして常に進化している点も良かったです。初期にはなかったMapbox Studioがリリースされ、マップタイルのカスタマイズやデザイン調整の柔軟性、運用のしやすさ、パフォーマンスなども開発チームからは好評でした。
株式会社ナイトレイ、CEO、石川氏
本記事では、ナイトレイによるMapbox GL JSとMapbox Studioの導入にあたっての経緯と具体的な活用方法についてご紹介しました。CITY INSIGHTのWeb分析ツールは以下のリンクから無料でお試し可能です。ぜひMapboxを使って実装されたツールを実際に見てみたい方はこちらからご登録ください!
▼ CITY INSIGHT Web分析ツール無料登録フォーム
https://cityinsight-app.nightley.jp/register
今後の取り組み
ナイトレイでは2024年からソフトウェアソリューション(Web分析ツール)を人流データと生成AIを組み合わせた新サービス「CITY INSIGHT Copilot(シティ インサイト コパイロット)」として進化させており、Mapboxとの今後更なる連携を模索中です。