メイン州からカリフォルニア州まで、米国内の何千ものコミュニティでは、歴史的に、差別的な法律、脅迫、暴力などを用いて、人種や民族を排除するという人種的分離が行われてきて、場合によっては現在も行われています。このようなコミュニティは、「サンダウン・タウン」と呼ばれています。差別されているグループは、日没までに町を出ることになっていたため、そこに住むことができなかったということに由来しています。
以下、サンダウン・タウンのマップ作成を支援したサム・フェーダー氏へのインタビュー内容(私=サム氏)
私がサンダウン・タウンについて知ったのは、著名な社会学者であり、社会正義の活動家でもあるジェームス・ローウェン博士の研究に出会ったことがきっかけでした。1999年、ローウェン博士は、自身や他の協力者による調査によって特定されたサンダウン・タウンのデータベースを公開し始め、2021年の夏に亡くなるまで、このプロジェクトを更新し続けました。ローウェン博士はその調査結果を著書『Sundown Towns: A Hidden Dimension of American Racism』という本を出版しました。
コラボレーションのきっかけ
普段からウェブマップを作成している私は、インタラクティブなマップを使ってサンダウン・タウンのデータベースを簡単に操作できるようにする機会を得ました。
ウェブサイトに掲載されているオリジナルのマップでは、州ごとのサンダウン・タウンのリストに移動することはできますが、全米のデータの全容を視覚的に伝えることはできませんでした。
私はローウェン博士に連絡を取り、Mapbox Communityで、このプロジェクトのために新しいマップを作ることを志願しました。ローウェン博士は喜んでこれを受け入れてくれました。新しいバージョンのデータベースとウェブサイトを構築していた彼のボランティアチームの助けを借りて、仕事に取り掛かりました。
リストから geojsonへ
マッププロジェクトの基本はデータです。サンダウン・タウンのチームは、データベースのレコードをAPIで提供する方法を考え出し、私はそれを新しいマップのデータレイヤーとして追加しました。
また、ユーザーが表示するデータを調整できるように、レイヤーのフィルタリング機能を追加しました。効率化されたライブAPIエンドポイントとMapbox GL JSのaddSource機能のおかげで、すべてのロケーションを一度に表示した場合でも、インタラクションは迅速に行われ、マップのロードも早くなりました。
「私たちは以前から、各州の町のリストを使ったサンダウン・タウンの調査には限界があると感じており、研究の解釈をさらに深めることができる新しいマップを作る方法を検討していました。サムのビジョンは、私たちがマップに求めるものと見事に一致していました。」
- ミシガン大学アメリカ文化・歴史学科准教授 スティーブン・ベレー氏
共同デザインの決定
マップのビジュアルデザインでは、データを用いた正確性と、大きなプロジェクトの学術的な研究を伝えるようなスタイルにしたいと思いました。歴史的な書物からヒントを得て、比較的落ち着いた色調のベースカラーを選び、データを大胆な色で強調しました。グレーから始まり、最終的には赤から黒の色調に落ち着き、マップのスタイルやウェブサイト上ではっきりと目立つようにしました。
また、研究者が発見した「注目の町」には、赤い旗のアイコンを使用しました。
あまりにも多くの場所があるため、最初はデータポイントをクラスター化しようとしました。しかし、研究チームは、ドット密度マップのようにすべてのポイントが見える視覚的なインパクトを好み、この可視化方式を採用しました。
私はローウェン博士とそのチームと緊密に協力し、彼らからのフィードバックを受けながら、スタイリングを調整していきました。Mapbox Studioではスタイリングの変更が簡単にできるので、さまざまなアイコンやカラーバリエーションをすぐに試すことができました。
また、フィードバックをビジュアルなプロトタイプに変換して、スタイリングの影響を確認することができたので、プロセスが非常にスムーズになりました。
「この新しいマップは、私たちのウェブサイトにとって貴重なものとなりました。全米に広がるサンダウン・タウンの様子を視覚的に表現しているだけでなく、ユーザーはより小さな地域にズームインして、その地域におけるサンダウン・タウンの慣行を素早く把握することができます。以前のフォーマットでは伝えられなかったサンダウン・タウンの地理的な理解が可能になりました。」
- ミシガン大学アメリカ文化・歴史学科准教授 スティーブン・ベレー氏
人種差別是正のためのマップ
サンダウン・タウンの歴史と現在の影響は、米国の社会情勢の中で、おそらくあまり理解されていない部分かもしれません。ローウェン博士と彼のチームが収集したデータは、その歴史を明らかにし、人々がなぜ今の場所に住み、もしくは住まないのかという理由について、誰もが批判的に考えるきっかけとなります。新しいインタラクティブ・マップは、人々がこうした歴史の広がりを理解し、関与するのに役立ちます。
早速使ってみましょう!
人種や社会正義のために活動している団体をご存知で、マップやウェブのスキルをお持ちの方は、お手伝いを申し出てみてはいかがでしょうか。
そして、さらなるサポートには、Mapboxコミュニティチームにご連絡ください。
*本記事は、Mapbox Inc. Blog の翻訳記事です。