完全自動運転EVの量産を目指して2021年に設立されたTuring株式会社。共同創業者CEOの山本一成氏は名人を倒した将棋プログラムの作者でもあり、『We Overtake Tesla』(Teslaを超える自動車メーカーを作る)というミッションを掲げています。Turing株式会社は2023年10月26日から開催される「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」に初出展し、IVI(車載インフォテインメント)にMapboxを組み込んでいるコンセプトカーを展示します。今回はMapboxの導入経緯から展示の見どころまで、ソフトウェア開発を担当している渡邉礁太郎氏にお話しを伺いました。
―Mapboxを知った経緯はなんでしょうか?
渡邉氏:Turing入社前からMapboxのことは知っていました。元々ナビゲーションアプリの中では「Yahoo!カーナビ」が好きでよく使っていて、そのベースマップがMapboxだったので、それで知りました。本格的に使い始めたのは、Turingに入社して自分でナビゲーションを開発することになってからです。
ーなぜ地図サービスの中からMapboxを選定されましたか?
渡邉氏:もちろん、いくつかの地図サービスと比較検討しました。そのためにも、まずは自分で触って試してみるのが一番早い方法ですが、すぐに使いたいのに法人の場合は問い合わせ経由でしか試せなかったりすると、時間がかかってしまいます。Mapboxはすぐに登録してAPIを使えるので、試すためのハードルが低いところが良かったです。こんなに自由に使えるように公開されているサービスは、なかなかないと思います。
ー実際に試してみていかがでしたか?
渡邉氏:驚いたのが、ナビゲーションをiOSアプリやAndroidアプリとして開発するのがすごく簡単だったことです。開発者でなくても頑張ればできるかもしれないぐらいのレベルでした。一方で、会社で車のプロダクトを作る場合、結局カスタマイズが必要になってくるので、すごく簡単には作れるけれど、混み合ったことができないと後々使えなくなってしまいます。その点、MapboxはAPI/SDKで提供されており、ほぼ全ての機能がプログラムで何とかできる形になっているので、選定した場合の将来的な不安はありませんでした。
ー今回展示用のIVIに組み込まれたMapboxのプロダクトは何ですか?
渡邉氏:イベントの展示用なので、地図のビジュアルも映えるものの方が良いだろうと思った時に3Dのプロダクトである「Mapbox Standard」をご紹介いただき、使ってみようということになりました。まだベータ版なので、他のSDKと一緒に使うことができませんでしたが、正式リリースが楽しみです。
ー他のプロダクトも利用したことはありますか?
渡邉氏:概念実証レベルですが、地図表示の「Maps SDK」や地点検索「Search SDK」、ナビゲーションの「Navigation SDK」を繋げてみたことがあります。すごく簡単にできましたし、将来的にはAPIを使うことになると思いますが、SDKでここまでできるなら社内でも検討を進めやすいなと思いました。
ー今後Mapboxを使って挑戦したいことありますか?
渡邉氏:一つは今回展示するようなIVI(車載インフォテインメント)内での3D地図表示です。カーナビは昔からあまり見た目が変わっていませんが、ユーザー目線に立って、どのように3D表現をナビゲーションの中に落とし込むとユーザーにとって使いやすいのかという検討をしっかりしていきたいです。
二つ目は音声認識やLLM(大規模言語モデル)を搭載するなど、地図に密接に連携したAIです。先日MapGPTのデモを見せていただきましたが、ああいった形のIVIの未来は誰もが考えているところだと思います。
ー今後どのような車を作っていきたいですか?
渡邉氏:2030年に完全自動運転EVの1万台生産を目指していますが、これはゴールではなく始まりだと考えています。日本においては1万台生産しても他の自動車メーカーに比べると小さいので、1万台量産できてやっとステージに立てると思います。
作りたい車は、まだコンセプト段階ですが、例えば完全自動運転なのでハンドルがない車を前提として、設計していくとか。自動運転で他社の車と差別化していきたいですね。
ーJAPAN MOBILITY SHOW 2023の見どころはどこでしょうか?
渡邉氏:日本の自動車メーカーは昭和に設立されたのが最後だと思います。平成もないですし、もちろん令和もありません。この令和の時代に、自動車メーカーを目指しているTuringという会社があって、まだ量産車ではないですが、コンセプトカーを作り上げて展示している。というストーリーを込みで見てもらえると面白いと思います。ソフトウェアの文脈から始まった会社が本当に車のハードウェアまで作ったのか!?と。もちろんコンセプトカー自体もすごくかっこよく仕上がっていますし、飾るだけではなく実際に走れる仕様になっているので、そこも見どころですね!