2021年11月1日~2日に東京国際フォーラム+オンラインで開催されたマーケティングカンファレンス「adtech tokyo 2021」にて、マップボックス・ジャパンが登壇しました。将来、地図とリアルの境目がなくなっていく世界でのロケーションベースドマーケティングをテーマに、事例を交えてお話ししました。この記事では、その内容についてご紹介します。
adtech tokyo 2021 情報
マップボックス・ジャパンが参加したのは最終日の11月2日でした。ブースでの参加はせず、16時からのプレゼンテーションステージで山崎友敬さんが「Mapboxが提案する未来のロケーションベースドマーケティング」と題してプレゼンを行いました。他にも35社がブースを出していました。
登壇者:山崎 友敬 / Tomotaka Yamazaki
ソニー、オーバーチュアを経て、その後ヤフーにて、検索連動型広告のプロダクト責任者やパブリッシャーの広告売上責任者を務める。2020年1月からマップボックス・ジャパンにて、地図広告プラットフォームの新規事業「Mapbox広告」を統括推進している。
プレゼンテーションの内容
事業1:地図情報サービスの開発プラットフォーム
マップボックス・ジャパンは一般ユーザーではなく、地図のサービス事業者に向けて、全世界で約6億人が使う地図開発のプラットフォームを展開しています。
Mapboxの4つの特徴
- デザイン-地図デザインツール「Mapbox Studio」を使えば、非エンジニアでも簡単にお客様が作りたいカスタマイズデザインを作成可能。
- 高精度-ゼンリン社提供の高精度の地図データをデフォルトで利用可能。Mapboxでも日々地図を改善。
- レンダリング-大規模なデータでも高速で処理して可視化できる。3Dビルディングも表示でき、非常に多様な表現が可能。
- 将来性-スマートグラスやウォッチなどの複数のスマートデバイスにも対応。デバイスの進化に伴ってMapboxの地図も利用可能にしていく。
実際の開発事例のご紹介
- ストーリーテリング・マップ:地図とコンテンツを同時に表現することでより直感的でリッチなユーザー体験を提供する手法
- リアルタイムマップ東北応援企画のデモ(LINK):新型コロナウイルス感染症の影響で自転車ロードレースなどのイベントに参加できないライダーやリモートでイベントを応援したい人に向けたサービス。ライダーの位置をリアルタイムで地図上に可視化。ライダー視点のリアルタイムカメラや「応援する」ボタンでインタラクティブに楽しめる仕組み。
- Mini Tokyo 3D (LINK)で電車のリアルタイム位置を可視化(個人開発者の草薙さんの作品):オープンデータになっている交通データを使い、実際に運行している電車を3Dマップ上にアニメーションで可視化。リアルタイムで電車の位置がわかり、見ていてとても楽しい。地下鉄モードに切り替えも可。
- River Runner (LINK): 米国内の3Dマップ上に 雨粒をクリックで落としてどういった経路で海までたどり着くのかを追うことができる。数センチ差で雨粒を落とすところをずらすだけで全く違う経路で海までたどり着くのがわかる。
事業2:広告プラットフォームとしての地図について
地図業界が解決すべき課題
1.サービス提供者のビジネスモデルが確立できていないことが課題
地図の開発には投資がかかるが、それに対して実際の地図を使ったサービスの収益性が低い。
良いサービスを作ってユーザーを増やす→収益を増やす→それを原資に新しいサービスを作っていくサイクルができてないという問題がある。
2.地図のサービス事業者が単独で地図の広告事業を行うのが非常に難しい
現状なかなか地図とフィットする広告がなく、地図×広告の相性がよくない。地図開発者としてはせっかく枠を用意したのに使い所がないという状況になっている。
Mapboxが目指す広告
- ユーザーにとって有益な情報であること
- 広告主にとって投資効果が明確であること
- 開発者にとってサービスの成長と収益化が両立できること
その結果事業の好循環サイクルを確立して確立して収益化を支援したい。これを単独で行うのは難しいのでマップアドネットワークを構成して群として魅力的な規模の広告商品を生み出す。
マップアドネットワーク参加会社(8月時点の最初の参加メンバー)
ヤフー株式会社、ゼンリン株式会社、ジョルダン株式会社、株式会社ナビタイムジャパン、株式会社駅探、インクリメントP株式会社、株式会社マップルの7社
プロモーテッドピン広告(7月よりベータサービスを開始)
地図上にあるピンをクリックすると広告カードが表示される(お店の名前や営業時間、住所、電話番号)などの基本情報とサイト誘導やルート検索等のアクション動線も設置。
地図自身が持つコンテクストを利用した様々なユースケース
・店舗のロゴや料理のアイコンを表示してユーザーに対する視認性を向上させ、集客増を目的とした大手レストランチェーン店様の事例
・電動キックボードの駐輪場の場所を表示したLUUP様の事例
リアルな店舗を訪問するだけではないオンラインでのコンバージョンポイントとなっている。
・ホテルの場所を表示してそのまま予約へ誘導するホテル予約サービスのキャンペーン
・各地に食べ物のアイコンを表示してその場所の産直品を注文できるネット通販サービス
従来の地図の横にバナーで広告を表示するよりも地図に馴染む形で広告を表示可能に。
地図サービスのクオリティを維持しつつ、従来の地図サービスの広告と比較してCTRは平均10-20倍に。アイコンのクリエイティブによっては、CTRが100倍以上のケースも。
今後のロードマップ
- 地図広告フォーマットの開発:ビデオ広告、3Dビューイング、ナビゲーションでの地図広告の開発
- 広告掲載面の拡大:現状のiOSに加えたAndroid、Web対応の3プラットフォーム対応。アドネットワークのパートナーに対しての広告掲載開発
- 広告管理画面の開発提供:広告管理APIの開発・公開によってより簡単な広告キャンペーンマネジメント、レポート表示をできるようにする
今後の展開
地図広告からロケーション広告へ
- 地図デザインを邪魔しない広告
- 利用シーンと連動した広告表示
- バーチャル空間も活用
シンプルなプロモーテッドピン広告から始めてロケーションベースの広告へ移行していく
最後に
インターン生がイベントのお手伝いをした感想
今回のカンファレンスでは、インターン生は主に集客の仕事をしていました。ノベルティやチラシなどを使い集客をしたのですが、ただモノを配布するだけではお客様の気を引くことは難しかったです。ノベルティを配るのと同じくらい「Mapboxって何なの?」を端的に表す言葉が必要であると思いました。ノベルティ、チラシを配りお客様とコンタクトを取れる時間は長くて1秒といったところです。この間に「Mapboxって何してる会社なの?」のアンサーとなるキャッチーな言葉が必要であると思いました。お客さんが興味を持ってくれる一言。これを添えるだけで、集客のレベルは1段とあがったのではないかと反省しました。自身がどれだけMapboxを好きでも、それを伝える言葉がないと意味をなしません。お客様に響く言葉づくりという点を次の集客では活かそうと感じました。
イベントで得られたこと
Mapboxとは何か。これを端的に表すなら地図開発プラットフォームの提供。カンファレンス中、この説明をしても、お客様の反応はポカーンとしている印象でした。この理由を考えてみた結果、ある仮説が思いつきました。一般ユーザーは現状使っている地図サービスに課題感を感じていないのではないか?ということ。個々人や各組織が自分の意図に沿った地図を作ることであらゆる可能性が広がる実感を持っている人はごく少数ではないでしょうか。他の地図サービスにはできないことがMapboxではできる。そして地図は与えられるものではなく、自分たちで作れるものという意識を一般の方に植え付ける。これが直近の課題なのではと思いました。今後は地図エンジニアのみならず、他業種のビジネスマン等に”地図のカスタマイズ性”の利点を伝えていくことで、Mapboxの可能性を広げられるのではないかと思いました。