Probable Futuresは、気候変動の影響の現実を一般の人々に伝えるために、詳細なビジュアライゼーションプラットフォームを立ち上げました。MapboxはProbable Futuresのチームと密接に協力し、複雑なデータをウェブ用のマップやタイルセットに加工しています。これらのデータは、Azaveaの「The 50 Hottest Places in US Politics」のようなツールを制作する開発者が再利用できるように構築されています。そこで、Probable Futuresのエグゼクティブディレクターであるアリソン・スマート氏と、ソフトウェアパートナーであるPostlight社のピーター・クローチェ氏とザカリー・ハリス氏に話を聞くことにしました。
Mapbox:Probable Futuresのサイトは素晴らしいですね。なぜこのサイトを作ろうと思ったのですか?また、気候変動のストーリーに欠けていたものは何でしょうか?
アリソン氏:私たちには、気候変動の科学と文化をつなぐ架け橋が足りていませんでした。何十年もの間、科学者たちは未来に関する有益な情報を蓄積してきましたが、それが一般に公開され、簡単にアクセスできるツールにうまく変換されていませんでした。私たちは共同研究者のチームと協力して、インタラクティブなマップと感覚的なストーリーテリング体験を通じて、気候変動の影響を鮮明に示すグローバルなサイトを構築しました。
私たちがProbable Futuresに込めた思いは、世界のどこに住んでいようとも、すべての人にとって直感的で便利で身近なものであり、私たちが直面している危機の範囲、規模、緊急性を理解する手助けとなることです。そのためには、シンプルさに徹底的にこだわる必要がありました。私たちは常にサイトを編集しており、機能やボタンを追加したい衝動に駆られたときには疑問を投げかけました。気候科学は直感的に理解できるものであるため、私たちのサイトにもそれを反映させたいと考えました。Probable Futuresは、ユーザーが自分のペースでデータを探せるようになっており、見たり読んだりした内容を振り返ることができます。そのためには、デザインや機能が複雑になってはいけません。
Mapbox:Webマップのプラットフォームを構築することは、皆さんのチームにとって新しい試みだったと思います。この方向性が決まってから、どのようにしてチームを結成したのですか?
アリソン氏:私たちは、好奇心旺盛で型破りな人たちと一緒に仕事をしたいと思いました。気候変動を一般の人々に伝える際に「何が有効か」という先入観を持っていない人たちです。ウッドウェル気候研究センターをサイエンスパートナーに迎えたことで、気候科学や地理空間データを正確に反映させることができました。Probable Futuresがアクセスしやすく、感動的なものになるためには、美しくデザインされ、非常に使いやすいインターフェイスでなければなりません。そこで私たちは、世界的なデザイン会社であるPostlight Digital Product StudioとMoth Designに協力を依頼しました。彼らはそれぞれの分野で高い技術を持っているだけでなく、気候変動や科学コミュニケーションにも強い関心を持っていました。
また、今回のプロジェクトのマップ作成にMapboxを採用しました。特に、豊富な教材やサポート、パートナーやユーザーの活発なコミュニティを評価しています。Probable Futuresがリーチしたい相手を理解し、その取り組みの価値と目標を共有するチームを集めました。彼らは、マッププラットフォームを成功させるための重要な鍵となっています。
Mapbox:気候モデルのデータは密度が高く、扱いが難しいことで知られています。このデータをマップに使用するためには何が必要でしたか?どのようなことを試し、最終的に何がうまくいったのでしょうか?
ザカリー氏:確かにデータは高密度でした。エンジニアリングチームは、通常は気候科学のコミュニティでしか使われないNetCDFという3次元ファイルフォーマットに慣れることから始めなければなりませんでした。これらのファイルをGeoJSONのようなWebフレンドリーなフォーマットに変換するための標準的な方法はなかったので、私たちはトランスレータを一から作成し、そのプロセスを柔軟に試験するためにPostgreSQL/PostGISを選択しました。
ピーター氏:最も重要だったのは、気候科学者、エンジニア、デザイナーの間で多くのコミュニケーションをはかり、意見交換を行ったことです。Mapboxと密接に仕事をすることで、私たちが行っている気候データの翻訳作業がいかに斬新なものであるかを知りました。実際、私たちが現在使用しているシステムやフレームワークの多くは、気候データを取り込むための条件を備えていません。Mapboxは気候データに対応できることが明らかになった時点で、以前から計画していたMapbox Tiling Service(MTS)のアーキテクチャの開発を加速させ、タイルサイズの拡大とカスタマイズを行ってくれました。
マップ作成とデザインにおいては、気候モデルのデータを正確に表現し、デザインをシンプルで直感的なものにすることを心がけました。例えば、気候モデルではグリッドセルを作成しますが、そのグリッドセルには、そのセル内の気候モデルのシミュレーションが集約され、平均化されています。多くのマップビジュアライゼーションでは、これらのグリッドセルを連続した色のグラデーションにならしています。これは実際にはデータを薄めてしてしまうため、私たちは、グリッドセルを維持することにしました。こうすることで、ユーザーはそのセルの背景にあるデータを探索することができ、他の気候モデルマップではどのような精度が期待できるのか、ユーザーに伝えることもできるのです。
Mapbox:どのMapboxツールをどのように使用しましたか?また、改善すべき点などがあれば教えてください。
ザック氏:多くの気候データはラスタータイルを使用していますが、Probable Futuresには柔軟性のあるベクトルタイルの方が適していました。ベクトルタイルを使うことで、データを視覚化するさまざまな方法をリアルタイムに試すことができました。例えば、私たちのチームでは、社内でカスタマイズされた公共の地図アプリケーションを使って、一般のユーザーが最も直感的に理解できる気候データの分類方法を見つけるまで実験しました。
かなりの回数の実験を行った後、私たちはMapbox Tiling Service(MTS)の「パワーユーザー」になる必要があると判断しました。インタラクティブなマップは、特にマップ間を移動するときにスムーズでパフォーマンスが高くなければなりません。ある温暖化シナリオを別のシナリオと比較することは重要な機能であり、それらの遷移はシームレスである必要がありました。独自のタイルシステムの構築を試みた後、テスト段階でのスタイルの迅速な反復と、完成品のブラウザでの効率的な読み込み時間の両方において、Mapboxタイルが最もスピードが速く、最良の方法であることが明らかになりました。
タイルセットのレシピを作るには試行錯誤が必要でした。Mapboxは、開発の過程でタイルサイズの制限を大幅に増やしてくれたので、とても助かりました。Probable Futuresのデータセットは膨大で、シナリオごとにデータの均質性が異なります。MTSがマップ体験を最適化するために標準的なサイズ制限を設けていることは理解しています。しかし、私たちのように詳細な気候モデルデータの場合、以前の制限はデータを処理する上での課題となりました。私たちはタイルセットのレシピを使ってグリッドデータを複数の「ソース」にスライスし、タイルセットの制限に収まるようにしようとしましたが、測定単位(温度や時間)が異なるため、「スライス」パラメータはタイルセットごとに異なりました。
これらの課題をMapboxのエンジニアと共有したところ、レシピの改善に協力してくれました。また、制限を増やすことで、開発プロセスをより効率的に、試行錯誤せずに進めることができるようになりました。
Mapbox:データを扱う方法はサイトだけではありません。加工されたタイルセットも公開されているので、それを使って他の人が作ることもできます。これまでにどのようなものが作られてきたのか、また今後どのようなものが作られるのかを教えてください。
アリソン氏:はい。そうですね、すでにとてもクリエイティブな統合が行われています。Azaveaは「The 50 Hottest Places in U.S. Politics」を作りました。このプロジェクトでは、Probable FuturesのタイルセットとCicero(選出された議員のデータベース)を組み合わせることで、上昇する気温と将来のトレンドを浮き彫りにしました。このプロジェクトでは、閲覧者に議員の連絡先などの情報を提供し、選出された議員に連絡を取るように促すことで、政治的な行動を促しています。
Kontur社は、気温の上昇が人の密集度と一致する場所を分析し、その複合的な指標を災害対策製品「Disaster Ninja」に統合しました。
これらは、Probable Futuresマップの応用例です。しかし、気候変動が生活のあらゆる面に影響を与えることはわかっており、データの応用の可能性は無限大です。だからこそ、私たちはこの情報に誰もがアクセスできるようにすることを約束します。Mapbox Data Exchangeを利用することで、私たちのタイルセットを共有することができます。Mapboxコミュニティの皆さんが、気候データを使って、どのような想像や構築をするのかを楽しみにしています。
この素晴らしい気候データリソースを提供してくれたProbable Futuresに感謝します。気候データをマッピングアプリケーションに組み込んでみたい方は、データエクスチェンジで気候タイルセットの詳細をご覧ください。
*本記事は、Mapbox Inc. Blogの翻訳記事です。